江戸しぐさ  2005.8/20

新潟の清水義晴さんに勧められて「江戸しぐさ」の本を仕事の合間を縫って読みました。

そこには、江戸商人が、人の密集した環境の中で生活し、不特定の知らない人たちを相手に商売を成功させてゆくための知恵を反映した、具体的な処し方のパターンが沢山紹介されていました。

安定社会の中で洗練・完成されてそれぞれに名前が付けられ、伝承されていた様子がうかがわれます。

それらに触れてまず気が付いたのは、「和の実学」で基本原則から導かれる心得や対応が色々ありますが、まるでそれらのさらなる展開を見ているような感じがすることです。

多くの項目が、ごく具体的な、日常繰り返される場面での対処についての話しなので、まるで母親が子供に箸の上げ下ろしを仕付けるような細かい特定の動作についての記述もありますが、総じて和道の現場編とでも言えるような、なるほど具体的に実践すればこういう形になるはずとうなづけるところばかりです。

ことごとく「和」の道に添う対処であり、「心価」への配慮にも適っています。

この本は学術書ではなく啓蒙的な読み物で、意見の混在や半端な叙述が目に付きますし、網羅性に関しては不明ですが、ここにある記述をヒントに、和道実践のこの具体レベルでの全体像を描き、時代を越えて伝えるべき「和しぐさ」として体系的に示すことは、大仕事ながら可能だと思われます。

ここまで破壊的に崩れ後退した日本人の文化性を急速に取り戻すための、類を見ない助けになる可能性があると見ています。

江戸時代が和の文化の成熟した時代であったことは間違いありませんが、この「江戸しぐさ」の資料は、また一つの面からの裏付けを加えたものに見えます。

(旧メッセージナウ2005年8月25日記事より)