携帯トイレ即製セットの周辺 2005.9/6

前回の本欄の記事を見て、「部品A:ペットボトルのキャップのてっぺん中央に直径十五ミリ~十八ミリの穴を開けたもの」と簡単に書いてあるが、この穴を空けるのが簡単にいくのかなと思われた方もあるのではないでしょうか。

たった一つ位つくるだけなら、少々非能率な方法でも目立ちませんが、いくつも作って人にあげたりしようとすると、何らかの工夫をした方法がないと実行困難になります。

今回の場合は、部品Aとなるキャップに穴を空けるにあたってのセンター出しの方法が山場になるようです。

ペットボトルのキャップの裏側を観察すると、ボトルの口の内側に入り込んで漏れを防ぐ役割をする円形の突起(弁)があります。穴がずれるとこの突起を傷つけてしまい、漏れるスキマ作ってしまいますので、この製作物にあっては重要条件と言えます。

中心が正確にわかれば真ん中に位置する穴を開けることが出来ます。

キャップの素材はプラスチックですが、木工用のドリルは、下穴を捉える小さなドリルが先端に付いた形になっていますので、これをキャップの上面の中心に凹みを作っておいて使用すれば大体は大丈夫です。

さて、そのセンターを出すための比較的正確で簡便な方法を模索しつつあるときに、見付けたのが、アサヒ十六茶のキャップは上面のセンターに凹みがあり、さらにその中心にまた小さな凹み(突起ではない)のある形状をしているということです。

これにより、案がまとまりました。

このキャップの凹みを利用して真ん中に直径一ミリの穴を鉄工用ドリルの刃で空けます。

さらにこのキャップの外側を薄いプラスチックフィルムで巻きます。

フィルムの幅はキャップの高さより五ミリほど高くはみ出る程度にします。

これを逆さにして、穴を空けたいキャップに上から嵌め、センターの穴を使って印をするか、ドリルの刃で少し彫ります。

このあと先ほど述べた木工用ドリルで穴を空け、穴の周辺を、先のふらつかない工作用カッターナイフで削り滑らかにします。

研究や開発の場では、こうしたいかにも周辺的な部分での工夫が、結構全体のありように響く場合がよくあります。

いわゆる微積分法の開発は、ニュートンの方がライプニッツより少し早かったようですが、ライプニッツの用いた記号が優れていたために広まり、ライプニッツに優先権があるという論争が学会で多年続いたということです。

これもいわば周辺的な部分の洗練度が歴史的展開に大きく影響した例です。


(旧メッセージナウ2005年9月10日記事より)