“ 殺人エレベータ”と競争入札 2006.6/9

たまたま今、外国系S社製のエレベータの事故で死者が出たのをきっかけに、同社のエレベータでのこれまでのトラブルの多発ぶりがマスコミで集中的に取り上げられています。


世界では第二位ながら日本では一パーセント程度のシェアとのことですが、国内メーカーのものより二割から三割安いというので、競争入札に強く、公共の建物に案外多く採用されていることが報道されていました。


私から見るとこうしたトラブルは、「競争入札」というものの基本的問題点が現れていると考えられる事例です。


実際の業者(商品)選定では、入札という形は残るとしても、あらかじめ業者の資格を問うとか、下限の価格を見積りしておいて、無茶な安値で落札されて粗悪品が納入されるという弊害を防ごうとしているようです。

しかし基本的に備わっている傾向はどうしても現れてしまうことを今回の例は物語っていると言えましょう。


競争入札の欠陥を分かりにくくしている要因の一つに名目思考があります。

「エレベータと名の付くものはみなエレベータにほかならない。間違いない!」

というわけで、

「あとは価格の問題だ。間違いない!」

となります。


その結果、理念のない営利事業者の努力は、適格エレベータとなる名目的条件を満たした上で、あらゆる面での中身の、とくに見えない所の省略を中心手段とする低コスト化を追求することになりがちです。


個性のない同業者群が、同品質でコスト面での努力だけで競争するという、分かりやすいけれど本来的でも実際的でもない状況を前提とする競争入札方式は、業者側に対しその前提に近づくことを要求し、結果として談合でもして受注を分かち合わなければやっていけないような横並び体質の業者群ができてしまうケースは多く発生してきました。


世間の常識に慣れてしまうことが、裸の王様を裸と思わないような世間同調回路を頭につくり出してしまうことに今一度注意したいところです。


そのためにも近々開催の思想のワクチンセミナーによる成熟的思考習慣の修得をお勧めします。


(旧メッセージナウ2006年6月12日記事より)