納税マニア成るか? 2009.3/10

毎月巡回出張をしていますが、今月は所得税・消費税の申告期限の月であり、出発前の週末前のさらに予定でふさがっている日の前までに申告書を作成して、届け出る必要がありました。

(現在東京)

 

 

サラリーマン社会では一般に所得税の処理は会社が代行しますので、社長も含めほとんどの人が税の申告の実務については知らないで済んでいると思われます。

 

 

私の場合、課税対象となる最低所得にもはるかに及ばない頃から勉強も兼ねて申告手続きを始めましたが、「書き方」「手引き」といった資料をいくら読んで考えても書き方が分からないのにはうんざりさせられたものです。

 

 

あるマンガに、毎年納税手続きが終わると一週間氷枕をして寝込むという焼鳥屋のばあさんの話がありましたが、自営業の納税者にとって、年に一度の極めて煩わしい関門と言えるでしょう。

 

これがおわると、まるで女性がお産を済ませた時(想像ですが)のように、スッキリと解き放たれた気分になります。

 

 

こんなに分かりにくいものを、一体ほかの人たちはどうしているのだろうという疑問も当然わいてきます。

 

そうすると、地区ごとに納税の相談日というものがあって、そこで分からないことを聞けるということだと思い、質問事項をたくさんメモして会場に行ってみました。

 

そこではなんと大勢の人たちが帳簿などを持参して、税務署の人に個別に作成を代行してもらっている姿がありました。

 

どうせ税務職員に依存しているのだから「手引き」などは分からなくても良いのです。

 

むしろ分かりにくさ、面倒くささを維持して全国の税理士などの仕事を確保しようとしているのではないかと疑いたくなったほどです。

 

しかもその代行記入の実態は、私から見ると依存納税者がまるで鬼の餌食になったように、「手引き」に書かれてもいない基準で、容赦なく限界までむしられます。

 

親切で設けられた相談日ではないわけです。

 

 

ただでさえ忙しい時間を割いての申告書の作成ですが、その中であえて一手間余分に掛けてでも、翌年の同じ作業が少しでも楽にできるように、毎年工夫を付け加えていきました。

 

たとえば、郵送されてくる源泉徴収票、生命保険料に係る控除額の通知などを、日頃から一カ所に収めて散逸しないように、表示を付けた保管箱を作るなどです。

 

作業にかかる前に、必要なものを取りそろえるための一覧表づくりもしました。

 

 

とくに、表計算ソフトを使っての作業において、計算や作表の細部で自動化・統合化する部分をだんだんと増やしていきました。

 

 

こうした、より便利にする工夫や改善の追加が毎年なされて、納税歴三十余年にも及ぶと、あたかも利子に利子が付いて残高が倍加するがごとき大差が発生するものです。

 

 

最近では、帳簿の現データから、並べ替えの手数なしに月別、科目別、相手先別などの集計が自動的にできるようになりましたので、たとえば、遅れて一枚の領収書が出てきた場合、その一枚のために並べ替え・再集計・再転記の作業をしなくても、帳簿の末尾に1行書き加えるだけで各種集計が自動的に変わり、瞬間的に新しい申告書ができるという、当初からすれば夢のような簡単さが実現しています。

 

その小気味よさは一種の快感であり、一方で減少傾向の苦痛感をしのぐ気配もあって、納税経験者から納税マニアに変わるのではと考えたりもします。

 

 

「時間がないから」

 

と最低限のことだけして、やりっ放しにしてきたとしたら、進歩はなく、いまだに毎年変わらず大きな骨折りと辛苦を繰り返しているはずです。

 

「時間がないからこそ工夫のための時間を取る」

 

・・これが体験しお勧めできる対処のあり方です。

 

これは、

 

「金がないからこそ勉強(種まき)に金を使う」

 

という精神にも通じます。

 

自治体で言えば

 

「財政難だからこそ、予算を割いて新産業の芽を育てる」

 

といったことです。

 

 

工夫を重ねる間、分かりにくさに対する考え方も変化(進歩)しました。

 

どうなのか分からない、分かるように書いてないことは、結局税務署にとってどうでもよいことなのであり、どうなりともするがよいというメッセージにほかならないことが多いわけです。

 

とくに税額に変化が及ばないような部分に関しては全くそうだと思われます。

 

そのどうでもよいことが大層に見え、疑問点・不明点に結論を出さねば前に進めないと思い込んでいたこと自体が、素人の浅はかさであったと言える面があります。

 

分からない(任せられた)部分は、とりあえずテキトー(常識的)に判断しておいて、もしあとで間違いだと指摘されるようなことがあったら、

 

「そんなことは、どこに“分かるように”書いてあるんですか!?」

 

と反問するつもりでいるくらいに図太く構えていればよいのではないでしょうか。

 

 

ある知人の税理士が、以前の課税には一応の「理」というものがあったが、最近はなりふり構わぬ税金の取り方になっていると述べていました。

 

納税書類作成の作業は、あたかも増築を重ねた旅館の複雑な廊下のごとくわかりにくく、また諸方面のメンツを立てんがための、本来無用な煩雑さに満ちているように見えます。

 

今度日本が生まれ変わるときには、この点についても抜本改革を提言したいところです。

 

 

これから社会の構造変化に伴って、自営業者が急速に増えるという予想があります。

 

自立・自営の道を歩み始めた人々に、素人納税者の目線で蓄積してきた経験やノウハウを参考にし役立ててもらえばと思うようになってきた昨今です。

 

 

(旧メッセージナウ2009年3月10日記事より)