ふぐ調理免許と経営免許  2009.3/19

ふぐ調理師の免許ができたのは、古代からのふぐ食用の歴史から見るとごく最近のことといえます。

実際に猛毒があって「当たる」のは、ふぐの中でも意外にごくわずか(一説には一万分の一)の個体なのだそうで、昔の料理人の中には、自分の発見した特別の調理法で毒を消すことができているのだと信じて、ふぐのキモや卵巣を使った料理を客に出し続ける人もいたようです。


それでも中毒客を出さないですんだとすれば、それは実は運が良かっただけということですが、おそらく当の調理人は、時と共に自信を強め、自分の調理法を固守するようになっていったことが想像されます。


しかし、そういう「安全なき安心」の夢想は、あるときあっけなく破れるわけです。


さて、企業経営の世界は、現在に至るも、ふぐ調理の免許がなかった時代さながらで、危ない経営が横行していますが、当の経営者がそれに気付いていません。

むしろ、会社が続いてきたことで自信を強め、世間にも認められて、経営法とすら呼べない自分の偏ったやり方を固守するケースにあふれています。


そうした、いわば無免許経営の危うさは、新たな激変の時代に入ってはなおのこと、大小を問わず、あるときなぜかあっというまに行き詰まるという形で顕在化するでありましょう。


ふぐ調理に際して守るべき原則の確立のためには、現場の調理人の経験見聞のみでは不十分であり、研究者の突き止めた知識が必要でした。


経営過程が五体満足であるための要件は、やはり研究成果としての適動設計の大原則から導かれます。


それに比べると、過去の成功企業の経営の共通点を探って抽出したような類のものは、一見説得力があっても、肝腎な要素を置き去りにして気付かないきらいがあります。


ふぐ調理の話に置き換えると、毒のありようについて未知の時代に、長年にわたり一度も中毒客を出していない多数の“優秀な”料理人から調理法を聞き出して共通点をまとめても、そこには説得力“しか”ないという構図に近いものがあります。現状追認型の学問の見かけ倒しには要注意です。


今年で開始以来六年目となる「経営免許講座」は、経営の世界を無免許の時代から有免許の時代に変えていこうとする試みでもあります。

ほどなく消えていく、また変わろうとしない過去タイプの経営者よりも、次世代を担う若手の経営志望者、経営者の相談を受ける立場の方に、是非学んでいただきたいものです。

また社会の転換に伴い大幅に増えると見られる個人事業者においても、経営免許の考え方が浸透することを願っています。


(旧メッセージナウ2009年3月19日記事より)